野尻 浩行「今、清き光の事、地の事」

Photographs
ーNow, questions to the land and the lightー
2014年11月5日~11月28日


つつましき青年がつつましき土地でつつましく光とたわむれ写真を撮っている。
震災から3年半、叫び声が静まりつつある中にこのつつましさが何か妙に新鮮なそよ風を感じ、ざわめきのないかすかな光に心地良さを覚えるのだ。
小さな芽に無口に穏やかな眼差しで水をやる。大木を育てる程の大義もなく、大それた願いや祈りも無く芽に水をやるという無欲無心な行為、生死のスパイラルに無抵抗である事、その水に光がキラキラと輝く。
私達は大地に営みを持ち、大地に還る。光は燦々と大地に降り注ぎ営みの糧とする。その営み自体が美しいというならば、無心に水をやる青年が何ともいとおしい。輝く光がいとおしい。
光無くば寄せる物も思いもない。
今僕はこの事が清らかな思いと共に自分の醜さを忘却させてくれる。
雑踏に咲く華麗な花を踏みつぶしてはならない。何故に?生きているからである。ただそれだけである。目の前のわずかな信頼。 つぶさに光を拾い集める事。風光り、光薫る。清き光の事、地の事。ふと我に還る。

空蓮房