杉田 敦展「サンクチュアリあるいはアジールのあとに来るもの」

-Light in August-
Installation
2015年11月4日~27日

八月の光
サンクチュアリ、あるいはアジールのあとに来るもの

アジールが求められた。3.11、そしてフクシマからずっと。アジールは求められ、そして、アジールであろうとする努力も続けられた。けれども、アジールと思われた場所は本当にそうだったのか。たとえ目に見えない放射線が、植物や細胞や遺伝子を傷つけるようなことは起こらないようになったとしても(もちろん、それさえも叶ってはいないのだが)、愚かな思い上がりが、平和の礎を傷つけるようなことはすでに起こりつつある。ここはもはやアジールではないのかもしれない。アジールはどこにあるのだろうか。おそらく、その答えは永遠に手に入ることはないだろう。しかしそれでも、それを求めることは意味のないことではない。求め続けることは、あるいはそれだけは、いつでも可能なはずなのだ。
フォークナーの聖域、サンクチュアリは、古代ギリシアのオリンポス山から射入ってくるような、古代そのもののような光、八月の光に受け継がれていった。オリンピアン・カーム、究極の静穏をみたしているはずの光。きっとその澄み切った光のなかで、それぞれがやるべきことと、向かうべき場所が、その輪郭を際立ったものにしていくことになるだろう。そして、それを行い、そこに向かうのだ。おそらく、場所ではなく、人そのものが、そしてその振る舞いこそが、サンクチュアリであり、アジールだということだ。すでにその兆しは見え始めている……。

杉田 敦