2007年9月5日~11月16日
今回ご案内致します展覧会は、創業約130年、新潟県新発田市にある吉原写真館に残るガラス乾板から起こした写真の中から、現在六代目の吉原悠博氏が編纂した明治から昭和に生きたナルミという一人の女性の一生の物語の写真並びに映像展であります。
ナルミは新発田で生まれ育ち、東京へ嫁に行った女性であります。明治34年8月15日、三代目吉原長平の二女として生まれ、当時、おとなしく我慢強い性格で父母の言う事を良く聞いたといいます。大正13年23歳に佐々倉雄次と結婚。佐々倉家は、当時東京の四谷区にて、東京でも大規模な四谷軒牧場を営んでいました。とはいえ、嫁いだ身、慣れない牧牛の世話、気質の荒い牧童達との生活に苦労したという話を残しています。五人の子供を授かり、昭和49年3月10日、満72歳でその生涯を終えました。(吉原 悠博)
一人の一生とはいえ生死の輪廻はどれほどに繰り返されて来た事でしょう。万物は縁起に因って連鎖しこの一瞬の現実の表層を構築しています。写真は記録します。しかし、それ以上に私達に残るものは、識下に満ちる共生の慈悲による死の覚悟かもしれません。絶え間なき生き死にの中に鏡の様に自分の空性を垣間みる事でしょう。過去未来という言葉の執着、虚構にとらわれる事なき時空に浸る時、何を観る事が出来ましょうか。
今回の展覧会は吉原悠博氏がホトケに養うを供える ―供養―の作業かもしれないと思います。(空蓮房)
吉原悠博ー美術家。
1960年新潟県新発田市生まれ。
東京芸術大学、Pratt Institute NYに学ぶ。
写真、映像によるインスタレーション、パブリックアートの作品を数々発表。
吉原写真館ホームページ