-言の繭、音の寺-
Art Director 奥定泰之/書 calligraphy 北村宗介
2017年6月1日~6月30日
そうか 言葉は魂だけじゃなく
耳まで傷つけていたのか
こころをつむるように
耳も莟をつむるのか
--「雪風」より
言葉は音を聴くだろうか
--「見えない波」より
生きうるための言葉は、もっとも秘められた言葉によって、つむがれてゆくのではないでしょうか。それは、詩のおおきな謎であり、魔法でもあります。
風、光、雨へとひらく花のように、肉体の外へ無垢に咲きながら、精神と身体の内奥へ、内奥へと、複雑な迷宮を渦巻いてすすむ、秘めやかな器官。耳は、詩、そのものに似ています。
詩集『耳の笹舟』は、心因性難聴という個人的で、秘めやかな体験から書かれました。この詩の個展では、展示と、各界で活躍する表現者たちとのコラボレーションをつうじ、詩集の言葉をより遠くの外気へ飛散させ、いまを生きる心身の海溝により深く潜在させるこころみです。
東日本大震災以後も烈しく流転する世界へ、生の内密な襞をうらがえし、無条件にさしだすとき。ポエジーを、書を、ダンスをつらぬく、どんな音が生まれるのでしょう。願わくは、諸存在の再生をうながす、音楽となって。
石田瑞穂